知識蓄積ノート【投資・FIRE】

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できるならその場に存在する時間を1秒でもいいから短くしたかった。

 

確か「内定式」は午後からのスタートだった。
 
その当時の私はまだ実家暮らしだったので、実家のある最寄りの駅から電車を一本乗り換えてその会場に向かう。会場となったのは某事業所のすぐ近くにある会館だった。電車での乗車時間は50分ほどで、家から駅までの時間を含めれば約1時間20分程度の時間がかかった。
 
 
内定式に遅刻するわけにもいかないので当然だいぶん時間の余裕をみて家を出た。昼食はその途中ですればいいと考えていた。
 
 
事業所の最寄り駅に着く。
地図は印刷して持っているし、それに何度も見返しているのでどのような経路で歩いていけばもだいたい把握している。ただ、実際にその街に降り立つのは初めてだったので見慣れない街はひどく私を戸惑わせた。駅前のコンビニに入って簡単な軽食を買った。そしてコンビニを出てすぐ近くにあった小さな公園のような場所のベンチに座り、その昼食を食べる。私の目の前を、同じく内定式に向かう「同期になる人」も横切っていたのかもしれないけど当然私は彼らの顔を全く知らない。その時の私にとってはまだ彼らは存在しないも同然だった。
 
その昼食はすぐに食べ終わった。
時計を見るとまだ内定式の開始には余裕がある。これから先の道も実際に歩くのは初めてだったので、本来ならそのまま余裕をもって会場に向かうのが正解だったのだろうけど、私の腰は鉛のように重く中々そのベンチを立ち上がれなかった。余裕を持って会場に到着するということは、その場に滞在する時間がその分長くなる。私にとって恐怖の対象でしかなかった「社会」は、その事実をひどく私にとって大きなものにしていた。できるならその場に存在する時間を1秒でもいいから短くしたかった。
 
 
といっても、その場に居続けるわけにもいかない。
これ以上その場に居続けると内定式に遅刻するリスクが発生する。そのような追い込まれた状況になってようやく私は重い腰を上げた。そして同じく鉛のように思い足を引きずるようにしてその会場に向かった。
 
 

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