株価チャート
23年9月の4,800円を天井に4,000円まで下落。
その後は一時4,400円まで持ち直していたが、再び売り戻されている。
週足で見ると、21年12月の3,000円を底に基本的には上昇トレンドを形成。ただし、やはり4,800円を天井にトレンドが下降側に変わってきているようにも見える。
日足チャート
週足チャート
24年3月期 第3四半期決算
決算発表日:2024年2月1日
売上高、営業利益
- 売上収益:4.6%
- 営業利益:△44.2%
- 営業利益率:6.9%
増収減益。
減益幅は44%と非常に大きい。
営業利益率は10%を切ってしまい、製薬事業としてみるとそれほど高くはない。
配当
- 配当金:188円
- 株価(2/7):4,219円
- 一株利益:59.45
- 配当利回り:4.4%
- 配当性向:316.2%
配当利回りは4.4%と高め。
ただし配当性向が300%強まで高くなってしまっている。
減益要因にもよるが、特殊要因による減益でないのであれば将来的な減配リスクは高そう。
一応決算資料の中では「累進的な配当方針」を謳っている。
損益計算書
増減額(増減率)
- 売上収益:1,416億円(4.6%)
- 売上原価:△1,099億円(11.8%)
- 研究開発費:△617億円(13.1%)
- 減損損失:△978億円(23.9%)
売上収益は伸ばすことが出来ているのだけど、それ以上に費用が上昇してしまっている。
売上収益(対前年度)
為替影響だけで1,415億円の増収効果。
それが無ければ売り上げは前年度とほぼ変わらず。
CORE営業利益(対前年度)
武田薬品工業で独自の指標として「CORE営業利益」という数値を提示している。
Core営業利益は、当期利益から、⾮定常的な事象に基づく影響、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費⽤など、本業に起因しない(⾮中核)事象による影響を調整した値とのこと。
新型コロナウィルスワクチンの減収要因による減益が非常に大きい。
もしそうだとしたら、今後新型コロナウィルスワクチン関連は伸びていかないだろうから、構造的な減益となる可能性がある。
財務ベース営業利益(対前年度)
CORE営業利益の減少(新型コロナウィルスワクチンの減収要因による減益)に追加して、さらに無形資産の減損損失が発生している。
その二つの要因によって今決算での大幅な減益結果につながっている。
ただし、寄与としてはCORE営業利益の減少の方が大きい。
キャッシュフロー計算書
一応フリーキャッシュフローはプラスにはなっているが、前年同期と比較すると大幅減。
財務活動によるキャッシュフロー(借金返済)を抑えて何とか帳尻を合わせている。
財務活動によるキャッシュ・フロー
配当金の支払いだけで 2,780億円を拠出。
利益が出なくなっている中で配当金支払いが重たくなっており、現金の期末残高も大きく減っている。
バランスシート
- 負債および資産合計:142,229億円
- 社債及び借入金(非流動負債):42,938億円
総資産に占める社債及び借入金(非流動負債)の比率は30.1%。
シャイアー買収で積み上がった借り上げ金を返済している最中のはずなのに、社債及び借入金が逆に当第3四半期が前年度よりも2,500億円も増えているのが少し気になる。
通期業績予想
営業利益
- 通期予想:2,250億円
- 第3四半期:2,241億円
- 進捗率:99.6%
通期予想は据え置き。
もともとが大幅な減益予想となっていたので、通期予想に対する営業利益の進捗率自体は99.6%と高い。
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まとめ
本決算結果は増収減益。しかも40%を越える大幅な減益。
増収に関しても、為替要因が無ければ怪しいところ。
現時点で利益財務構造に毀損が見られる。
それに、7000億円超を稼いでいる潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」が30年に特許切れになるとのこと。
すぐに問題が発生するわけではないだろうけど、将来性は少し心配。
決算資料の中で「累進的な配当方針」を謳っているが、配当性向が300%を越えているこの状況でどこまで今の水準の配当を維持できるのか。
配当利回り自体は4.4%と悪くはないが、利益財務構造に対する懸念は無視できない。
私の基本戦略は、「利益財務構造が優れており、独占製品を有する高配当銘柄に分散投資する」というもの。その前提が維持できていれば保有を継続する。ただし、その前提が崩れてしまっているのなら、ポートフォリオの入れ替えを検討するべき。
一時的に資金を退避させるのも視野に入れよう。