外国株の配当金に適用できる税額控除、「外国税額控除」の控除限度額は次のように計算される。
所得税の控除限度額
=その年の所得税額×(その年の国外の所得金額÷その年の所得総額)
外国税額控除制度とは…
国際的な二重課税を排除するために、外国での源泉徴収がある場合、外国で納付した税額を一定の限度額の中で、国内の所得税や住民税から差引く制度です。下記の算式により計算した控除額を限度として控除できます。控除しきれなかった分は翌年以降3年間の繰越しが認められています。
ただし、「その年の所得税額」は、配当控除等の税額控除を控除した後の所得税額になるとのこと。
将来的に配当控除も利用していこうと考えているのなら、その点については注意が必要。
その年の所得税額
その年の所得税額とは、配当控除や住宅借入金等特別控除といった税額控除などを控除した後の所得税額になります。税額控除などを控除する前の所得税額で計算すると、外国税額控除額を間違って求めてしまうので、注意が必要です。
実際どの程度の控除額が戻ってくるのか、いくつかの条件で試しに計算してみよう。
シミュレーション1
給与所得と配当所得の両方がある場合。
外国税額控除
計算条件
- 給与所得:900万円
- 給与所得(給与所得控除後):750万円
- 所得税:172.5万円(税率:23%)
- 外国株配当金:70万円
- 外国株配当金にかかる所得税:9.45万円(15%)
- 外国株配当金にかかる外国税:7万円(10%)
外国税額控除の限度額
=(172.5万+9.45万)×(70万/(900万+70万))
=13.13万円
外国税額控除:7万円(<13.13万円)
確定申告して外国税額控除を受ければ、7万円の税金は戻ってくる計算になる。
健康保険料
一方で、確定申告することで増える健康保険料はどのくらいなのか。
試しに「国保シミュレーション」を利用して計算してみよう。
税額控除しない場合
- 給与収入900万円
- 健康保険料:826,100円(1年間の保険料額)
税額控除する場合
- 給与所得900万円/その他所得70万円
- 健康保険料:890,300円(1年間の保険料額)
確定申告することによって健康保険料が6.42万円増えることになる。
健康保険は会社との折半なので、実質的な負担増分は3.21万円。
トータルで見ると、7万円の控除額が戻ってきて3.21万円の負担増なので、3.79万円分は得をするということか。
シミュレーション2
給与所得は無く、配当所得のみの場合(アーリーリタイア後を想定)。
外国税額控除/配当控除
計算条件
- 給与所得:0円
- 給与所得(給与所得控除後):0円
- 所得税:0円
- 日本株配当金:100万円
- 日本株配当金にかかる所得税:15万円(15%)
- 配当控除:12.8万円(100万×(20%-7.2%))
- 外国株配当金:100万円
- 外国株配当金にかかる所得税:13.5万円(15%)
- 外国株配当金にかかる外国税:10万円(10%)
外国税額控除の限度額
=(15万+13.5万-12.8万)×(100万/(100万+100万))
=7.85万円
外国税額控除:7.85万円
日本株における配当控除額
=100万×(20%-7.2%)
=12.8万円
総合課税として確定申告することによって、外国株に対しては外国税額控除、日本株に対しては配当控除を適用する。
トータルで20.65万円分得する計算になる。
健康保険料
確定申告することによって「収入」が増額されてしまうので、健康保険料も当然上がる。
確定申告しない場合
- 収入0万円
- 健康保険料:63,800円(1年間の保険料額)
確定申告する場合(総合課税)
- 収入200万円
- 健康保険料:168,400円(1年間の保険料額)
確定申告することによって健康保険料が10.46万円増えることになる。
ただし、外国税額控除、配当控除で20.65万円が控除として戻ってくるので、トータルでは10.19万円分得する計算になる。
この計算がどこまで正しいかは怪しいけど、それでもこの制度を使うメリットはありそうな気はする。