4年前、転職したことをきっかけに川崎に引っ越してきた。
それ以前は特に箱根駅伝にはそれほど興味も無かった。子供の頃に正月に親の実家に帰省しているときなどは、テレビで特に映すものが無いのでいつもその箱根駅伝が映されていて、そしてそれを私もなんとなく見ていた、そのくらいの記憶しかなかった。
ただ、川崎に引っ越してきて初めて、家の近くに箱根駅伝のコースが設定されていることを知った。
第一区、第十区のコースとなっていて、往路の1月2日は朝早く、そして復路の1月3日は昼頃に家の近くを選手たちが走っていった。
せっかくなので走っている選手を生で見てみよう。
引っ越してからすぐの正月はそもそも家の近くが箱根駅伝のコースになっていること自体をまだ知らなかったので、実際に初めて生で見たのは2回目の正月だった。
その当時はまだコロナが広がる前だったので、沿道には各大学ののぼりが立っていて、そして道路を覆うように大勢の観客が立ち並んでいた。私はその隙間から、実際に走っている選手を初めて直接目にした。
私の目の前を走り去ったのは本当に一瞬だった。すぐにその選手の背中は道路の先に消えていった。だけど、その時、私の中に不思議な感動が沸き起こったのを今でも覚えている。
自分のすべてを賭けて一つのことに取り組む。
そしてただ仲間のタスキをつなぐという目的で必死になって頑張る。だからこそそれを見る人に感動を与えることが出来るのかもしれない。
私は、その姿を見ていて本当に泣きそうになった。
今年も私は正月の昼に家を出て沿道に立った。
大学ののぼりを立てることは禁止されていて、コロナ前の時よりも明らかに人の数は少ない。
しばらく待っていると、前の方から
「頑張れ!」
という掛け声や、拍手の音が聞こえてきた。
そしてそれらの掛け声や拍手に包まれて、私の目の前を駒澤大学のアンカーが一位で駆け抜けていった。
がんばれ・・・。
私は心の中でつぶやく。
それは私自身に向けての言葉でもあった。