私の母は1950年生まれなので、2010年が60歳の還暦になる。
その2010年の出来事で、私にとって強く印象付けられている一つの記憶がある。現在が2023年だから、もう13年も前の話だ。
私の両親はともに鳥取県出身だったので、夏季や冬季の長期休暇の時は毎年のように鳥取県に帰省していた。
私たち兄妹がまだ学生の頃は一緒に帰省していたのだけど、さすがに社会人ともなるとわざわざ親の実家に帰省するということもなくなっていた。ただ、その2010年の夏は、たまたま私たち兄妹の都合が空いていたのか、両親と一緒に鳥取県に帰省していた。
帰省して2,3日の後だっただろうか。
母が60歳の還暦を迎えるということで、そのお祝いの食事会が開催されることになった。そしてその食事会には、鳥取県に在住していた父の妹夫婦(私にとっての叔父、叔母)も出席することになった。
その食事会がその夜に予定されている昼、姉から突然一通のメールが届いた。
「食事会で挨拶をしてほしい」
私は4人兄妹で、私以外は姉が一人、妹が二人いる。
私だけが男でそれ以外がすべて女ということで、私は自分の兄妹とそれほど仲がいいという訳でもなかった。なので、突然のその姉のメールに驚いた。どうやら私以外の姉妹でその食事会のある程度の段取りは組んでいて、その中に長男である私の「挨拶」というくだりも組み込まれているらしい。面倒だな、とは思ったけど断るわけにもいかなかったので、
「分かった」
と返事をした。
そして、夜の食事会に向けて、どのような言葉をしゃべろうかなとぼんやり考えていた。変に奇をてらったような挨拶をしても仕方がない。自分自身で日々考えたり、感じていることをそのまま素直にしゃべろうと思った。