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和也の父親(志郎)に、母親(真由子)と自分を過去に救ってもらった香澄。
香澄の父親は、真由子、香澄に毎日暴力を振るった。
「私の毎日は地獄そのものだった」
橋の上、身を投げ出しそうとした中、一人の男性が通りかかる。
「私はもう、誰も信じられない」
「君の周りには信じられる人間は一人もいなかったかもしれない。だけど、この世の中には信じられる人がいるということを知ってほしい。そして私を信じてほしい」
「何の根拠も無かったけど、その男性の真剣な目を見たときに、私は信じられると思った」
志郎は私財をなげうって、香澄と真由子を救ってくれた。
香澄はその時の援助を元に、弁護士になる。
いつか志郎の助けになることだけが彼女にとっての希望だった。
強盗殺人事件。
志郎は命を落とす。
和也の家は醜い相続争いの末に没落していく。和也は身寄りのない子供として親戚の中をたらい回しにされる。
「私は誰も信じない」
16歳になった和也はその親戚の家から姿を消した。和也の行方を真剣に探そうとするものは一人もいなかった。
10年後、和也はある殺人事件の犯人として逮捕される。
「俺はやっていない。俺は真犯人を見た。ここから出ることが出来れば、俺が奴を捕まえる」
香澄は和也の事件をニュースで知る。
香澄は自分の過去を隠して、和也の弁護人となり和也と接見する。
「俺は誰も信じない。だからあんたに俺のことを信じてくれと言うつもりはない」
「私は、あなたの言葉を信じる」
香澄は和也が脱走する手引きをする。
警察に追われながら、二人して真犯人を追う。
「どうしてあんたは俺にそこまでしてくれるんだ?」
「あなたのお父さんは、私と私の母を地獄から救ってくれた。私は何があってもあなたを救う」
「・・・」
「私は全てを投げ捨ててもあなたを救う。それこそが私の存在意義なのだから」
和也が姿を消していた10年間に何があったのか。
和也の言葉は真実だったのか。それとも嘘だったのか。
真犯人の策謀により和也自身も自分の言葉を信じられなくなっていく。
「俺は、嘘を言っていた。俺があいつを殺したんだ」
和也は自分の罪を認める。
だけど香澄にはその言葉が真実だとは思えなかった。
和也が自分自身のことを信じられなくなったとしても、香澄だけは最後まで和也を信じた。
最後、香澄は真犯人を追い詰める。
「どうしてあんたは最後まで俺のことを信じてくれたんだ?」
「信じることに理由なんて必要ない。ただ、私はあなたを信じただけ。そのことを教えてくれたのは、あなたのお父さんなんだよ」
登場人物
太田 香澄(34)
子供の頃、父親から虐待を受け続ける。橋から飛び降りようとしていた所を和也の父親に救われる。
竹内 和也(28)
10年前、父親を強盗殺人で失う。その後、親戚間で相続争いが行われ、和也は親戚の間をたらいまわしにされたが、その後姿を消す。
太田 真由子(60)
香澄の母親。夫からの家庭内暴力に苦しみ続ける。そして香澄と同じように和也の父親に救われる。
竹内 志郎(58)
和也の父親。10年前、強盗殺人により命を落とす。