健康保険の現状の続き
少子高齢化の流れを考えると、この国の社会保障給付費(年金、医療、介護等)は今後、大きく膨張していくと考えられる。
そうなった場合、どのような未来が訪れるのか。
おそらく次の3つの事態が発生する。
- 保険料を上げる
- 負担割合を引き上げる
- 給付を抑える
保険料を上げる
年金や健康保険の保険料は年々上がっている。
増税してしまうと国民の反発が大きいので、国はとりやすいところからお金を取ろうとする。その結果、この国の社会保障における国民負担率は大きく上昇してきている。

国民負担率(2025年)
2025年の国民負担率は46.2%だが、そのうち18.0%が社会保障負担となっている。1990年から地方税、国税の負担率はほとんど変わっていないが、社会保障負担は10.6%から18.0%と大きく上昇している。
健康保険料率が過去最高を更新したことも以前にニュースになっていた。
2025年4月23日
健康保険組合連合会(健保連)が23日に発表した2025年度予算の早期集計で、大企業の従業員らが入る健康保険組合の平均保険料率は過去最高になった。高齢者医療への拠出が膨らんだのが要因だ。給付と負担のバランスを見直さなければ、賃上げが進んでも現役世代の消費拡大はおぼつかない。
負担割合を引き上げる
健康保険加入者の医療費の負担割合は、年齢によって変わってくる。
6歳以上70歳未満までは3割負担となるが、70歳以上75歳未満は2割負担、75歳以上は1割負担となる。ただし、現役並み所得者(年収約370万円以上)は3割負担のままとなる。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/dl/info02d-37.pdf
令和4年10月に後期高齢者(75歳以上)の自己負担比率が引き上げられた。一定以上所得のある被保険者は1割負担から2割負担になっている。
今後、さらなる引き上げもあるかもしれない。
給付を抑える
医療に関する給付を抑える案も出てはいる。
高額療養費制度
日本の健康保険には「高額療養費制度」という制度がある。
この制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った額がひと月で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度となっている。
例えば、70歳以上、年収約370万円~770万円(3割負担) の人が、100万円の医療費がかかった場合、自己負担額の上限額は87,430円となる。

https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf
上限額は年齢、年収によって細かく分類されている。
自己負担額以外の医療費は、すべて保険料と公費で賄われる。
医療費は高齢化によるものだけではなく、新薬や技術進歩によっても高額化している。
がん治療の薬剤費は10~15年前に比べて10~50倍となり、月50万円を超える治療が当たり前になっている。
また、1カ月あたり1000万円を超える超高額レセプト(診療報酬明細書)も急増している。健康保険組合連合会によると23年度の超高額レセプトは2156件で、13年度から6.4倍に増えた。
2025/08/26 日本経済新聞
医療費膨張は「高齢化」が原因という常識があと10年ほどで変わる。代わりに医療費を押し上げるのが、新薬の普及などによる治療や薬剤の「高額化」だ。今後、高齢者の増加ペースが鈍っても医療費は増え続ける見通し。治療費高騰への対応を怠れば、国民負担は抑えられない。

医療費増、「高齢化」減速後も 新薬や技術進歩で「高額化」 国民負担への対応急務 - 日本経済新聞
政府は医療制度改革として、高額療養費の上限を3段階で引き上げることを予定していた。それによって5,300億円の医療給付の圧縮を見込んでいた。
しかしがんや難病患者らの反発もあり、引き上げはすべて見直しとなっている。
当時の石破首相は秋までに方針決定するとしていたが、首相退陣もあり、方針は何も決定されていない。
2025/03/08 日本経済新聞
政府は7日、「高額療養費制度」の自己負担上限の引き上げをいったん見送ることを決めた。がんや難病患者らの反発に加え、国会では野党が全面凍結を要求し、夏に参院選を控える参院自民党や公明党からも異論が出ていた。政府の改革案に疑問符がつけば、今後の医療制度改革にも逆風となりかねない。

医療制度改革に逆風 高額療養費引き上げ後退 議論拙速、膨らむ現役負担 - 日本経済新聞
2025/10/08 日本経済新聞
自民党の高市早苗総裁が社会保障分野でまず直面するのが、患者が支払う医療費を一定額に抑える高額療養費制度の見直しだ。患者側の反発を受けて石破茂政権が上限引き上げを凍結し、5300億円を見込んだ医療給付の圧縮が宙に浮く。現役世代の社会保険料負担は重い。玉虫色の態度では「秋まで」が期限の方針決定はおぼつかない。
