知識蓄積ノート

日々得られる知識、洞察をひたすら蓄積するブログ

Oさんの異動

 

火曜日(11月9日)の設計室の朝会の中で、室長の方からOさんが調達部門に異動するとの連絡があった。

 

私はこの会社に3年前に中途で入社したので、それ以前のこの会社の中での出来事であったり、また在籍している社員の年次などは当然知らない。ただ、私とOさんは会社での等級は同じだったし、年齢も近かったので私なりに親近感は感じていた。うっすら聞いた中では、もともと別の設計室にいたらしいけど、私が入社する少し前にこの設計室に異動してきたらしい。

 

 

 

現在Oさんは、その設計室で新しく立ち上げようとしている新機種の設計を担っていた。

私はその機種とはかかわりを持っていなかったけど、その仕事の中でOさんが室長から色々ときつく言われているのは部外者であった私の眼からも見えていた。そんな訳だったから、Oさんの調達部門への異動を聞いたときに、

きっと、あの室長の下で設計という仕事を続けるのが嫌になったんだろうな

とぼんやりと思った。

 

それと同時に、私は少しだけ

「もったいないな」

と思った。

 

Oさんは私の眼から見てもしっかりとした考えを持っているし、自分の考えもきちんと言葉で表現することのできる人だった。

 

理系の設計者の中では中々自分の考えを流暢に言葉で表現するのが苦手の人も多い。私もそのような人間の一人なので、私には全く持ち合わせていない高いコミュニケーション能力を持っているOさんを羨ましくも思っていた。会社の中で出世していくのは、このように自分の考えを言葉でしっかりと表現することができるような人間に限られる。室長も、その上の部長も当然その条件に当てはまるような人間ではあった。

 

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正直、私自身も、その室長にはうんざりさせられているような状態だった。

今私が担当している機種とは別の一つ前の機種では、開発の担当管理職がその室長だったので、一緒に仕事をしている中でその 人間的な厭らしさを嫌と言うほど見せつけられていた。別に無能だというつもりは全くなかったけど、ただ、下の人にはひどく独善的な決めつけた言葉を投げつけるような人間だった。そのような言葉に私は何度もうんざりさせられた。その室長と会話を交わすこと自体が非常に大きなストレスとなるような状態だったから、如何せん私とその室長とはうまく仕事をやっていけるような関係にはなっていなかった。室長自身も、私が彼にタイムリーに報告をしなかったから不満を持っていたのだと思う。ただ、そのような空気を作ったのは彼自身だと私は思っていた。彼は、

「上司へのレポートラインはしっかりとしてください」

というようなことを口にしていたけど、いつも忙しそうにしていて、会話をしようにも決めつけたように下の者を遣り込めるような言葉しか発してこない。正直、会話をすること自体うんざりだった。

 

彼は、下の者自身が上司との間で会話ができるような環境を作るべきだという考えを持っていたのかもしれないけど、私の考えは違った。

 

そのような環境は上の人の方こそが作るべきもののはず

私はそう思っていたから、リーダーとして下に何人かの設計者が付くようになったとしても、私自身が話しやすい環境を作ろうとした。どんなに忙しくても、そしてどんなにイライラしていてもそれを決して表に出さないようにして、そしてその設計者からの言葉を聞くようにしていたし、質問には私なりに真剣に考えて答えるようにしていた。ある意味ではその室長を反面教師にして、私なりに「お互いにしゃべりやすい空気」を持ったチームを作ろうと思った。