テーマ
現実世界では、いじめ、家庭崩壊、貧困で救いのない一人の少女、吉岡 杏奈（17）。
杏奈は学校に行かなくなり、ネット上で一つの仮想世界を作り上げていった。
そこでは少女は誰もがうらやむような存在になれた。
その中で、杏奈の自我は少しずつ崩れ始める。何が現実で何が仮想なのか、分からなくなっていく。
世の中にとって杏奈の存在は、仮想世界における存在の方が一つの現実だった。世界にはどちらの杏奈が真実なのか見分ける術は無かったし、見分ける必要性も感じていなかった。
仮想世界における杏奈のアバターが杏奈の意図しないところで暴走し始める。
それを利用する人たちにとっては、本物の杏奈なのか、偽りの杏奈なのかなんてもはや関係なかった。
仮想世界で祭り上げられた少女が、自分のいじめていた吉岡 杏奈と同一人物だと気づいた元いじめっ子 小林 美沙（17）。
美沙は、少女の事態をその仮想世界にさらした。
仮想世界では手のひら返しで杏奈を貶め始める。
「翼を失ったイカロスのように、私は真っ逆さまに落ちていった」
杏奈にとっての救いとは何だったのか。
死。それが杏奈にとっての救いだった。
苦しみから自分を解放してくれる唯一の手段だと信じた。
最後、杏奈は高層ビルの上から飛び降りる。
まるで、イカロスのように。
登場人物
吉岡 杏奈（17）
いじめで不登校になった少女。家庭はすでに崩壊していて、自分を顧みてくれる人は一人もいない。
小林 美沙（17）
元いじめっ子。仮想世界で注目を浴びている「A」が杏奈だと気づく。そしてその事実をネットにさらす。
