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夢の中で見知らぬ女性を見るようになった上原祐樹(28)。だけどどことなく見覚えがあるような感覚がある。ある日、渋谷の公園でその女性と会っている夢を見る。妙にリアルな感覚を覚えた祐樹は渋谷に向かう。その渋谷のスクランブル交差点でその女性を見かけるがすぐに見失う。
「あの女性は誰なんだ? なぜ自分はあんな夢を見るんだ?」
そのことを知りたいと思うが調べる手段は無い。
その女性を見かけてから、祐樹に別の現象が起きるようになる。
祐樹がその女性の姿になった夢を見る。夢の中で歩いているはずなのに、気づくとその場所に「祐樹」として立っている。
「一体、自分の身に何が起きているんだ?」
周りに説明しても信じてもらえるとも思えず、誰にも助けを求めることができない。
ある朝目覚めると机の上に見知らぬノートが置かれている。開くと女性の文字で日記が書かれている。全く見覚えのない内容。「君は、一体誰なんだ」と最後のページに書き足す。
鈴木由紀子(28)の日常。仕事(広告代理店)がうまくいかなくて上司に叱られてばかり。
由紀子に異常が起こる。記憶が飛ぶようになる。健忘症なのか。病院に行くと毎日日記を書くことを勧められる。記憶の異常により仕事もうまくできなくなり、休職するようになる。
「一体、自分に何が起こっているの?」
そんな中、日記は継続する。
ある日、日記を書こうと日記帳を開くと「君は、一体誰なんだ」と見覚えのない筆跡で書かれているのを見つける。いつの間に誰が書いたんだろう。由紀子は家に防犯カメラを設置する。
祐樹と由紀子との間での日記を介したやり取り。
それぞれに発生している異常をお互いに告白しあう。「どこかに原因があるはずだ」 祐樹はお互いの過去を探っていこうと提案する。祐樹は「中学以前の自分の記憶がない」ことを発見する。由紀子は「中学時代の記憶が自分には無いこと」を思い出す。由紀子は「自分の中学時代に何かがあったんだ」と考える。実家に帰り、自分の部屋で自分が中学時代に書いた日記を探す。
由紀子(14)の日記。
由紀子の中学時代のいじめ。自殺未遂。
現実逃避するために一人の架空の人物を作り出す。由紀子はその人物に「上原祐樹」と名付けた。「祐樹」として日記を書くようになる。
「この日記は今日で最後。このまま続けていると私は戻って来られなくなる。祐樹、あなたがいてくれたから私は生きて来られた。今までありがとう。そしてさようなら」
防犯カメラの映像。
由紀子が夜中に起き出して、ノートに何やら書き出している。
渋谷のスクランブル交差点。
「俺は、君が作り出した架空の人物だったんだね」祐樹は少し寂しそうに微笑んだ。
「ありがとう。あなたがいてくれたから、私はあの日々を生き延びることができたんだよ」
登場人物
上原祐樹(28)
主人公
父親との確執がある
将来の目標を見いだせていない
大学卒業後、就職に失敗
今はフリーターとしてコンビニでバイトしている
鈴木由紀子(28)
夢に出てきた女性
広告代理店に勤めている。
自分に自信がない。ただ、その自信のなさがどこから来るのは自分ではよくわかっていない。
実は中学生時代にいじめられており、その時の自己否定感が自身の無さの原因だった。
その時の記憶から逃れるために、高校、大学と必死になって勉強し、ある広告代理店に就職することができていた。
野中智恵(19)
主人公と同じコンビニで働く
高校を卒業して、看護学校に通っている
小さい頃に母親を亡くしている
少しでも学費を稼ごうとコンビニでのバイトと両立させている
上原隆夫(57)
祐樹の父親
フリーターをやっている自分の息子を恥ずかしく思っている
構成表
状況設定
- 祐樹の視点による描写。知らない女性の夢を見る。
- 渋谷のスクランブル交差点。その女性とすれ違う。
- 主人公の生活に異常が起こる。夢。自分がその女性の視点になった夢を見る。
- コンビニ。店長、智恵とのやりとり。祐樹は自分の身に起こっている異常について智恵に話す。
- 夢。同じように街角を歩いている。ショーウィンドウに移る自分の姿はあの女性のもの。
- 朝、目覚めると洗面台に向かう。そこにはまたあの女性の姿。まだ夢の中なのか。
- 外に飛び出す。自分の身に何が起こっているのか。ショーウィンドウには自分の姿。それまで夢を見ていたはずなのに、祐樹としてその場所に立っている。どこまでが夢でどこまでが現実なのか。
- 独白。そのような経験が続く。自分は精神分裂病なのか。それともこれが夢遊病というものなのか。
- 夢。机の上でノートの何やら書き込んでいる。机の上の鏡をのぞくと、そこにはあの女性の姿が映っている。
- 朝、起きると、机の上にノートが置かれている。夢で見たあのノート。祐樹はそのノートを開く。
- ノート。日記のようだった。最後のページの女性の一日の描写。日付は前日になっている。
- 祐樹は「あなたは、誰ですか?」と最後のページに書き足す。
葛藤
- 由紀子の視点による描写。
- 由紀子の異常。記憶が飛ぶ。仕事に支障をきたし休職する。医者から日記を書くように勧められる。
- 由紀子の日記(現在)。由紀子の日常の記録。
- 由紀子の日記(現在)。「君は、一体誰なんだ」。見知らぬ書き込み。いつの間に誰が書いたんだろう。
- 由紀子は家に防犯カメラを設置する。
- 由紀子と祐樹は、それぞれに発生している異常をお互いに告白しあう。「どこかに原因があるはずだ」 祐樹はお互いの過去を探っていこうと提案する。
- 祐樹は「中学以前の自分の記憶がない」ことを発見する。
- 由紀子は「中学時代の記憶が自分には無いこと」を思い出す。由紀子は「自分の中学時代に何かがあったんだ」と考える。
- 由紀子は実家に帰り、自分の部屋で自分が中学時代に書いた日記を探す。
- 由紀子の日記(中学)。いじめ、自殺未遂。
- 由紀子の日記(中学)。現実逃避するために一人の架空の人物を作り出す。私はその人物に「上原祐樹」と名付けた。「祐樹」として日記を書くようになる。
- 由紀子の日記(中学)。この日記は今日で最後。このまま続けていると私は戻って来られなくなる。
- 由紀子が設置した防犯カメラの動画。夜中に由紀子が起き出して、ノートに書きこんでいる。
解決
- 渋谷の交差点。「俺は、君が作り出した架空の人物だったんだね」祐樹は少し寂しそうに微笑んだ。「ありがとう。あなたがいてくれたから、私はあの日々を生き延びることができたんだよ」